畳Q&A(1)


Q・畳って日本独特のもの?
畳は「折りたたみ重なること」が語源であり、古事記にまで遡ります。畳は大和民族が生み出したものですが、わら床に表がついた現在の形式ができあがったのは中世の後半になってからです。その畳表を張り替える事によって新しい物に生まれ変わるという構造は日本独特の物です。
Q・畳表には銘柄があるのですか?
各主産地ごとに名称があります。広島産は備後表、岡山産は備中表、熊本産は肥後表、福岡産は筑後表、高知産は土佐表と昔の地名で呼ばれています。
Q・一枚の畳にはどれぐらいのイグサが使われている?
およそ 4,000〜5,000本のイグサが使われています。畳の品質を決めるのは、イグサの質量と、長さ、色調です。
Q・畳の縁を何故踏んではいけないのか?
畳が生まれた経緯を考えてみますと、むしろのような草やわらで織られたこもを、折り畳んでしまったりするうちに、厚く重ねて布団のような寝具として使うように工夫され、それを包み閉じるために縁に布が被せられたのではないかと考察されます。

飛鳥時代の法隆寺に伝わる、畳ベッドの御床(おんしょう)が現存する最古の物ですが、平安時代には今使われているような畳が布団ベッドのように使われ、寝具や座具として高貴な方々に愛用されたようで、大変な高級品だったようです。

それらの畳の縁は貴重な絹や麻などの布地で、身分をあらわす文様や彩りが定められ、畳の厚さや大きさにも影響が及び、以来江戸時代までその名残を留めました。

明治時代になってからは身分制度もなくなり、畳も庶民にもかなり使われるようにはなりましたが、手作りの材料がほとんどでしたから、大正から昭和の始めごろまでは未だ贅沢品で、客間や仏間と寝間程度にしか使われませんでした。

戦後の30年代頃からは核家族化が進み、大量のウサギ小屋住宅が供給されましたが、それに伴い畳べりを縫い着ける縫着機が普及し始め、また材料製造の機械化の進展とともに量産化も進んで、値段の安い普級品が沢山生産される様になったので、少面積のマッチ箱住宅にふさわしい多機能さを持った畳の部屋が中心になり、沢山の畳が敷かれたものでした。

そんなことからも解るように、縁を大切に取り扱う生活習慣が根付いていたのではないかと憶測されますし、昔の縁生地は主に麻布や絹で染色も植物染めがほとんどで、色が飛びやすく実用的な丈夫さでも無かったものですから、丁寧に扱われていたようです。

また戦時中の物資不足時代のように、品質の悪い物しか生活用具には使えなかった時には、布地は貴重品ですから紙布などが使われ、丈夫な物では有りませんでしたから、踏む事はタブーでもありました。

さらに畳縁には紋縁と言う、格式を重んじ家紋を入れるものがございまして、主には神聖な床の間に使われますが、格式の高い仏間や客間にも付けられ、お寺や神社に代表されるそれぞれの紋様が有ります。

宗派によって違いが有ったり、皇室の関係に近い所や、宮家毎とか、武家や商家の流れによっては、色々な家紋を入れる事が昔は至極当たり前で、身分制度の名残とスティタスシンボルでもありました。
ですから家紋の入った畳縁を踏む事は、御先祖や親の顔を踏むのと同じ事であるから、縁を踏まないようにするのが武家のたしなみ、商家の代継ぎをする者の大切な心得であった訳です。

また、紋縁以外にも動植物柄など生き物をテーマとした柄も多く使われましたので、生き物や草花を踏みつける事は極力避けるべき「心やさしく静かに歩くべし」という躾もありました。

お茶の世界でも縁を踏んではいけないとされております。茶道では立居振舞の動きに合理性と美しさを探求しており、歩く歩幅もおおよそで決まっているようです。

礼儀作法もお道具の寸法も、数寄屋建築の室内の内法寸法も、すべて手織の畳表の目はばの五分目の曲尺寸法が基準になっているようです。これは千利休が打ち立てた「曲(かね)割りの法」という宇宙世界を理論的に寸法で割り切るようにしたことから出ているようです。

お茶室は狭いので、たとえ踏み込まれても刃物を振り回しにくく命を狙われにくいということから、秘密の相談事や、血判状を交わすような時にも使われ、それを敵に狙われて縁の下に忍び込まれたときには、畳の合わせ目の縁がついた所を狙って刃物を突くようにしていたようです。

畳の材料と厚みは、弓矢の的受けにも使われているように例え槍で突いても突き通す事は出来ません。それにひきかえ畳のへりや角の部分は弱くて壊れやすいものですから、余り強く意識的に踏み込んだりしない様にと言う、取り扱い注意といたわりの気持ちも有ります。

室町時代からはだんだんと部屋全体に畳を敷き詰めるようになり、其の弱い部分が角に出ないので、床面全体が平らで安全で丈夫な敷物になったといえます。

また高床式の家では、もし畳の縁に布を貼らずにおいたら畳の間から隙間風が吹き上げ、冬の寒さが応えたでしょう。

現在、床の間用の畳縁に使われている高麗(こうらい)紋様には、大紋、中紋、小中紋、九条小紋(くじょうこもん)、散(ちらし)紋、大桐紋、大松紋、といった大きさ毎の区分に加えて、花型、七宝(しちほう)、菊水(立て枠)、唐草、松葉といった紋型毎と、白、黒、茶、鶯、納戸(紺)、日光(黄赤)といった色による区分と、材料の品質では、綿、スフと、絹うんげん、大和錦、などの絹織物もございます。
そして別注文で作る寺紋や家紋のものが有ります。

普通の畳縁は光輝縁(こうきべり)と言って、主に細幅織物で作られ、材料としては、綿糸、人絹糸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、テトロンなどと、金糸を織り込む事も有り、お座敷用の紋縁も実用向きに作られたものが有ります。

また実に様々な文様と色合いと織り方の畳縁があり、料理屋や旅館向きあるいはフレッシュなパステルカラーまで、何千種類と商品化されてファッションの流行さえも追いかけるほどになっています。
Q・正方形の畳の名称がわからないのです。以前、そのような形のものを「琉球畳」という記事を読んだ記憶があるのですが、正式名称があるのでしょうか?
正方形の畳とは、ごく一般的には、普通の2対1長方形の半分の大きさのものを、総称して半畳タタミといっております。

「琉球畳」は、丈夫でラフな三角イグサの青表(琉球表)を使った物で、正方形の場合はやはり、半畳タタミであり、最近は縁のついて無いすっきりとしたデザインが、流行っているようです。

縁無半畳は縦横交互の市松敷きに光と陰の変化を与えたりして田舎家風、あるいは洋風に見せる事が多いようです。普通の細い丸イグサ表でも、もちろん縁無は出来ますが、どちらにしても仕事が難しいので、お値段は中級品以上の高値にはなるかと思います。

Q・縁無の琉球だたみは値段も高いのでしょうか?
縁無の琉球だたみは、上級品以上の御予算を組んでいただかないと施工が難しいのと、材料の畳表が手作りの為に高価な物が多いのですが、建築業者の方が余り予備知識無しに御予算を組まれてしまう事も合って、後で慌てたり、逃げ腰になられたりする事も有ります。

お値段は1畳あたり3万円以上はかかると思いますし、最近流行の半畳の市松敷きでしたらやはり1枚で同じくらいのお値段になるのが普通です。

また、畳業者が昔どおりの仕事ぶりを発揮しようとしても、材料事情が許してくれない場合がほとんどの筈ですから、新しい工夫をせねばきちんとした仕上がりを期待出来ません。
材料次第でも色々な工夫をすれば、縁無畳も作れるのですが、まだ十分な普及がなされていないので、これからの課題では有ります。

それから場合によっては畳縁の色合いで、いぐさ表のようなモスグリーンなど、淡い同系色の物が有りますから、余り目立たないので縁無感覚を楽しめ、畳表も色々な織り方の物から選ばれれば、気に入る場合もあるかと存じます。あわせて御一考なさってみてください。


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